「バーソは自由に」

考え方はいろいろあるから面白い。

 鰻と別嬪と厚化粧の関係。 

が来れば、鰻(うなぎ)のかば焼きを思い出す。
だが、鰻屋に行くと、「松>竹>梅」という階級制のゆえにひと悶着が起きる。
すなわち、
最上位の「松」はちょっと畏れ多いなあ、と生来の弱気と貧乏性がしゃしゃり出て、
といって下位の「梅」はちょっと情けないなあ、と男の意地らしきものが顔を見せ、
しばし逡巡のあと、結局は「竹」を注文して、たけえなあと心の中でぶつぶつ言い、
鰻に階級があるというよりは、食べるほうの階級意識がお家騒動を起こすのだ。

そんな客の心理を考慮して、「梅>竹>松」の逆順にしている店もあるそうだ。
ただし、元々は「松=竹=梅」と三者平等で、序列はなかったとか。

それにしても牛丼の『吉野家』では、なぜ普通盛を「並」なんて言うのだろうか。
「並一丁」と店員に言われると、「お前は並だ」と言われているようじゃないですか。
まあ、その通りなんですがね。なんせ牛丼屋に入る客ですから。

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歌川国芳「春の虹蜺」。鰻を食べているときに虹が出て、振り返ろうとしている。

今回は鰻屋の話から、すかんぴんじゃあなく、べっぴんとすっぴんの話になりますよ。
ついでに厚化粧と薄化粧、どっちがお好きですか。

  阿吽の呼吸で、空気を読み、吸って吐いて一生を終える。 

「空気を読む」という言葉がある。
 その場の雰囲気から状況を推測し、自分は何をすべきかを考えることをいう。
阿吽あうんの呼吸」という言葉がある。
 二者が互いの気持ちを感じ取り、息をぴったり合わせて行動することをいう。

しかし空気は読むものではない。空気は吸って吐くものである。

「阿吽」とは、サンスクリット語のアルファベットで最初の字と最後の字の音写。
 最初の字「阿/ア」は、口を開いて発音することから“吐く息”の意になり、※1
 最後の字「吽/フーン」は、口を閉じて発音することから“吸う息”の意になった。
  密教では、「阿」は万物の原因(理)、「吽」は万物の結果(智)を意味するとされる。

人は「オギャー」と声を出して産まれ、最期は「―――・・ ・ 」と息を引き取る。※2
その間、人は空気を吸って吐いてを繰り返し、ひとえに風の前の塵と同じになるのだ。

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飼い主と息ぴったりの柴犬マリの「新体操」演技。

 「どんぶり」と「どじょうっこ」の親密そうな関係。 

どんぶり飯の「どんぶり」は、どうして、どんぶりという名なのでしょう。
この問いには、あのシェークスピアの有名なセリフにも似た深遠さがあります。
「ああ、ロミオ。あなたはどうしてロミオなの?」

ジュリエットは、恋の本質が見えていました。
「バラという花にどんな名前を付けようとも、その香りに変わりはないはずよ」

そうです。恋は、家の名が背負っている旧い社会的背景とは何の関係もありません。

「ロミオ様。そのお名前をお捨てになって、そして、あなたの血肉でも何でもない、
その名前の代わりに、このわたくしのすべてをお受け取りになって頂きたいの」

少々歯が浮くのは、上流階級を表したいがための言葉遣いのせいもあるでしょう。
ああ、聞かせてよ、愛の言葉を。リュシエンヌ・ボワイエが聴きたくなりました。

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名は体を表すと申します。しかし名は実体とは関係ない場合も多々あります。
いったい何を見て、人は生きていったらいいのでしょう。
感情は繊細なほうが愉しいのか。思考は大雑把なほうが生きやすいのか。
さあ、どんぶりかんじょう的な小咄ですよ。

 「いつやるか? 今でしょ! 」の思想は、詩や絵画にも表れている。 

言葉は、ちょっとした言い回しの違いで、がらりと印象が変わる。
まずは予備校講師・林 修氏の「いつやるか? 今でしょ! 」のセリフがウケたワケの話から。

林氏自身が「予備校講師なら誰だって、今やれ、すぐやれ、と生徒を鼓舞するものです」と
著書『今やる人になる40の習慣』で言っているように、メッセージ自体はごく平凡だ。

話題になった要因は、「いつやるか? 今でしょ! 」と言うときの顔がユニークなことの他に、
「今でしょう」と言えば推量形で自信不足に聞こえるが、「今でしょう」から「う」を取り、
「今でしょ! (違いますか? )」と、反語的な問い掛けを含む断定表現にしたのが効いている。
それにより、相手が心の中で、うむ、そうだなあ、と同意するカラクリになっている。

そしてむろん、決断しない、先延ばしにするといった社会風潮が背景にはあるのだろう。

ラテン語で「カルペ・ディエム/Carpe diem」という言葉がある。※1
紀元前1世紀の古代ローマの詩人ホラティウスが書いた詩に出てくる。

意味は「その日(の花)を摘め」で、英語では「seize the day/その日をつかめ」と訳される。※2
明日のことは分からない。今日を大切にせよ。いつやるか? 今でしょ! ということだ。

The Flower Picker1900rr
John William Waterhouse: Boreas. 1903

「その日を摘め」という実利的とも言える思想は、後世の詩人や画家にも伝わっている。

 カノンあるいはキャノンとは、規範や規準のこと。 

パリの街は、ほとんどの道路に車線が引かれてないらしい。
運転するときは、左右の車に接触しないよう神経を使いそうだ。
自由を重んじ、なるべく規則は作らないようにしているのだろうか。

規則や規準は有れば、凡人は思考や行為の是非が見極めやすくなる。
もし水の氷点と沸点を何度と定めなければ、暑さ寒さの説明は難しい。
もし法律がなく、良心だけで正邪を決めるなら、争いをなくすのは難しい。

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NOT Portrait of a Young Girl Mothanna Hussein:NOT ART 出典

カノンあるいはキャノンという言葉の使われ方が面白いですよ。

 同じ漢字を繰り返して使う、先人の知恵。 

最近、LINEで一日に400回も恋情を送った(元)議員が話題になった。
それほどの回数なら、きっと同じ殺し文句を何度も繰り返して使っただろう。

同じことを何度も言うのは、くどい人と認知症の人と下手な漫才師の特徴だ。
だが賢い人は、同じことを繰り返しているなら、省略化できないかと考える。
あるいは繰り返しを要領よく行なうことで、より合理的になることを考える。

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常用漢字だけで描いた北斎画。→蟻の実験工房

今回は、同じ漢字を繰り返して使う点で、日本人が創意工夫をした話です。

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