「バーソは自由に」

考え方はいろいろあるから面白い。

 ブリューゲル《反逆天使の墜落》は、愛の思考を示してないか。 

初めて『横浜美術館』に行った。
みなとみらい にあり、道路は広く、気持ちのいい場所にあった。

見たのは「マックス・エルンスト」コレクション展(6月24日まで)。
初めて知った名だが、細密な版画から、シュルレアリスムの大きな絵まで、
緻密な迫力感が面白かった。
コラージュは、横尾忠則の初期の作品を思い出した。

MaxErnst_01_20120602092714.jpg
マックス・エルンスト《ユークリッド》1945年 65×59cm 油彩

帰りに館内のショップに寄ったら、
ガラス戸棚の「フィギア」がふと目に留まった。
光沢感のある艶っぽい赤に気をそそられ、つい衝動買い。5250円・現品限り。

80406_listImage.jpg

今回は、この「フィギア」の解き明かしがテーマです。

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
ピーテル・ブリューゲル《反逆天使の墜落》の登場者。
と、帰宅してから、調べたら分かった。

題材は聖書の『黙示録』で、「神の側」が「悪の側」を退治する場面。
中空を飛んでいる白衣の天使たちが「神の側」で、
下のほうにいる妙な姿・形の者たちが、退治・根絶される「悪の側」だ。

The Fall of the Rebel Angels
Pieter_Bruegel_I-Fall_of_rebel_Angels_20120602143632.jpg
1562年 117×162cm ブリュッセル王立美術館

買ってきた「フィギア」さんを探したら、画面の右下に見つかった
(上写真・赤矢印)。
この子は絵の下のほうにいる。では悪党の一味を買ったのか、
と、若干不安になった。

口にしてるのが吹き矢なら、中央の天使長ミカエルを狙っている。
だが、アップで見ると、眼をつむっているみたいだ。

koiu.jpg

背中の突起状のものを見ていたら、黙示録の描写を思い出した。

「第五の天使がラッパを吹いた・・・いなごの群れが地上へ出て来た。
顔は人間の顔のようであった。・・・髪は女の髪のようで、胸には鉄の胸当て
のようなものを着け、さそりのように、尾と針があって」
 
黙示録9:1-10 新共同訳

この「いなご兵」の描写によく似ている。ならば、第五の天使の仲間だ。
神の側なら、さあどうぞどうぞ、と気分良く、飾り棚にお迎えした。

yy 001

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
それにしても黙示録の「神の裁き」の描写はひどすぎる。
神は最後の裁きで、キリストに剣を持たせて、悪魔と悪霊たちと邪悪な者たちを
殺させることが描写されているのだが、これには問題が大きく二つある。

一つは、滅ぼされる人間は、聖書では、どんな人かということだ
聖書では、神とキリストを信じない者、
あるいは信じていても、死に至るまで忠実を
保たない者は、大人も子供もみな滅ぼされる側になる。
(黙示録19:17,18,2:10)

もう一つは、愛と平和の神が人間を殺しまくる、という考え方だ
キリストは「天の神が悪人をも愛しているように、
あなた方の敵をも愛せよ」とか
「剣を取る者は剣にて滅びる」と言って、
殺人はおろか、武力闘争をも全面否定した。

では、羽をつけた聖らかな天使たちが無辜(むこ)の人々を
皆殺しにするという考えは、
「神は愛である」という聖書の教えと矛盾・衝突しないのだろうか。

Fall of the Rebel Angels, by Luca Giordano (1634-1705)

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
解き明かしの結論。

それで、ふと思ったのは、ブリューゲルも同様に思ったので、
《反逆天使の墜落》の絵では、
退治される側の者たちを怪物や魔物の姿に描いたのではないか?

つまり神に退治される者たちを、人間たちではなく、
想像上の生き物に描くことで、
「教会が教える神の怖ろしい裁きは、人間が想像力で生み出した
考えに過ぎない」
と暗に言いたかったのではないだろうか?

いなご君がとても素直な いい表情をしていたことも、
その考えを裏打ちしているようにも、ふと思えたのだが (^^;)

(むろん西欧によくある風刺画のように、
悪人を魑魅魍魎に描く発想も当然あります)

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ああ、さっぱりわからない(-.-)’

頭が破裂しそうです・・・
一周間猶予をください!
いや二週間かな(・)(・)"

うんにゃ。
一カ月・・・

あは、あははは(;一_一)

2012/06/02(土) |URL|NANTEI [edit]

うーん
私も難しー。
今回はまずは堕天使の話ですね。
堕天使には、なぜかしら悲しいイメージをもっていた私です。
(かわいそうにも思ってました。)
天から落ちてしまったのですもの。
堕天使も天使なので、
羽が付いていますね。

やっぱり天使の仲間なのですよね。


バーソさんのお家の
食器棚ですか?
壁板の絵も雰囲気がありますね。
暗く照明があたった感じの
ピーテル・ブリューゲルは、
今日は主役にしてもらって
輝いてみえます。

2012/06/02(土) |URL|ゆりママ [edit]

NANTEIさんへ。(^^)

コメント、ありがとうございます。
わたしは以前、悪魔や悪霊を信じる熱心なキリスト教徒でした。
今でも魔物とか妖怪を見ると、気色悪いなあと思う傾向があります。
30年以上も聖書を学んだので、潜在意識に残っているようです。

ピーテル・ブリューゲルやヒエロニムス・ボスの絵のように、
悪魔悪霊をおどろおどろしい怪物として描いた宗教画は、
中世の人々の迷信的な信仰を示唆しているように思えます。

この21世紀でも悪魔悪霊は実在者だと信じる人は多くいて、
昔も今も人間の考えることは変わらないのだなあと思います。

わたしは、宇宙の神の本質は「愛」だと思っているのですが、
神は人間を裁く怖い神だと思ってる人が多くいるので、
バーソのブログはすぐこういう話題になってしまいます。

今回もよくぞ読んでくださいました。深く感謝申し上げます。

2012/06/02(土) |URL|☆バーソ☆ [edit]

ゆりママさんへ。(^^)

コメント、ありがとうございます。
堕天使をかわいそうに思うというのは、さすが、優しいですね。

たとえ誰かが堕落したとしても、見放してしまうのではなく、
愛を示し続けるというのが本当の「愛」ですから、
ゆりママさんは本当の「愛」にすごく近いひとなんですね。
職業はまさに天職ですね。転職しないでくださいよー。
(と、折角いいところなのに、ああ、ぶちこわし・・・(^^;)

フィギアは居間(6畳間)の「飾り棚」に入れました。
バックの絵は、じつは林の中に立つ人物写真なんです。
全体を暗くしてフィギアの顔にスポットライトを当てました。
いつも温かいコメントをいただき、感謝しています。

2012/06/02(土) |URL|☆バーソ☆ [edit]

おはようございます。

こういうフィギュアもあるんですね〜。
他の天使や魔物たちもあるのでしょうか。

下の方にいる異形の者たちも、元は天使として美しい形をしていたのであろうに、何がきっかけでこんなに姿を変えなければならなかったのだろうと、考えてしまいました。
元は同じ仲間であった天使たちに滅ぼされながら、何を考えたのでしょう。
天使たちは、かつての仲間をどんな思いで滅ぼしたのでしょう。
そこには、正義を盾にして勝利を喜ぶよりも、もっと哀しみや苦しみに満ちていたかもしれない…なんて、考えていたら、この絵がとても哀しく思えてしまいました(^。^;)

勧善懲悪が通じるような単純明快な世界は、それはそれでオハナシとしては面白いしすっきりしたりもするのですが、実際には完全なる悪なんてないんじゃないかと思っております。

この絵が堕天使を異形の者に描いてあるのは、人そのものではなくて、人の心の中の様々な悪の部分のみを滅ぼして、悲しみで封印された心の中の善の部分を助け出そうとしている天使の頑張りを描いているイメージかもしれない、なんて思いました。
だって、同じ天使が天使を、人が人を滅ぼすのはあまりにも哀しすぎますもん。。。

2012/06/03(日) |URL|りんご [edit]

りんごさんへ。(^^)

こんにちは。コメント、ありがとうございます。

「滅ぼす側の天使」が「滅ぼされる側の天使」を思う心情を、
もっと哀しみや苦しみに満ちていたかもしれない、と思いやる
りんごさんは優しいですね。

≫この絵が堕天使を異形の者に描いてあるのは・・・
人の心の中の様々な悪の部分のみを滅ぼして、
悲しみで封印された心の中の善の部分を助け出そうとしている
天使の頑張りを描いているイメージかもしれない。>

これは「アガペー愛」が根底にあって出てきた言葉ですね。
素晴らしい注解だと思いました。

黙示録は「黙示(啓示)」によって与えられたと冒頭に書かれています。
内容は象徴と比喩だらけなので、いろいろに解釈ができます。

文字通りにとると、18歳以下禁のC級ホラー映画になります。
神の最後の審判の大殺戮で、地球上は血だらけ死体だらけです。
悪が滅ぼされて善が勝って、ともかくハッピーエンド?です。

比ゆ的な解釈なら、りんごさんのような解釈がいいですねー。
神が、人の心の悪の部分のみを滅ぼし、
天使が、人の心の善の部分を助け出す。完璧なハッピーエンドです。
神の「愛」とは、本来そういうものなんだろうと思います。

キリスト教は、特に排他性が強い唯我独尊的な宗教です。
熱心な信者は、義人であることを誇り、排他的になりがちです。
歴史上、考え方が違うだけでクリスチャン同士が殺しあいました。

わたしは「堕天使」などいないと思っているので、
あえて堕天使という言葉を使うなら、
『堕人間にも愛を』などいかがでしょう・・・。

(フィギアは他の種類もあり、通販でも買えるみたいですよ)

2012/06/03(日) |URL|☆バーソ☆ [edit]

ブリューゲルは、ほかに、子供をいじめてる絵とか、殺戮の絵とかかいてますよね。、ボッスに似てます。ボッスは大好きです。画面的にはカラフルで明るくて、私の大好きな絵ですが、内容はドロドロしたものですね。ドロドロした絵をかいてる画家はほんとに多いですね。ゴヤといい、ルドンといい、ブリューゲルも。皆晩年は穏やかな絵になっていくけど。
若い頃って、ドロドロした絵を描きがちなのかなーと思ったけど、歴史のメインって、やっぱり戦争。なんで、人間は戦争は嫌いと言いながら
戦争を繰り返してきたんだろう。画家が、こんなに戦争批判の絵をかいてきたにもかかわらず。
神も仏もないものだなあと思います。
堕天使と関係ないしとりとめなくてごめんなさい。

フィギュア、わたしも欲しい。

2012/06/03(日) |URL|abe [edit]

abeさんへ。(^^)

コメント、ありがとうございます。
さすがに画家abeさんらしい感想ですね。

ボッスが大好きなんですか。ちょっぴり意外でした。
ルドンはこの間、見に行きましたね。
自分とは違う傾向に関心があるということなんでしょうか。

晩年は穏やかになっていく、というのも面白いですね。
円熟していくのでしょうか。枯れていくのでしょうか。

芸術の「盛り5年説」を、誰かが言ってましたけど、
作家では大体5年位の期間で才能が終わってしまうとか。

そうだとすると、画家は芸術生命が長いですね。
歳をとるほどうまくなっていくところがあります。
abeさんはまだお若いので、これからも、どんどん
いい作品を出し続けてくださいよー。期待していますから。

2012/06/03(日) |URL|☆バーソ☆ [edit]

はじめまして、おはなと申します。
とても興味深いお話しです。
じっくり、何度も読み返しました。

2012/06/06(水) |URL|おはな [edit]

おはなさんへ。(^^)

訪問、コメント、ありがとうございます。
ブリューゲルの怪物話を何度も読んでいただいたとのこと。
うれしいですね。こちらもよろしくお願いします。

わたしはキリスト教歴がかなり長いのですが、
どうも神を「恐ろしい裁きの神」とする考え方が
聖書が教える「愛の神」のイメージと合わないと思うようになり、
それで時々そのことをブログで書いています。

神のことに興味がないと面白くないのでは、
と思っているのですが、おはなさんに読んでいただき、
コメントまでいただき、感謝しております。

オカメインコを飼っているようですね。
今は飼ってないのですが、わたしも小鳥が大好きです。
散歩中など、すずめがピョンピョン飛び跳ねている
のを見ると、心がなごみます。

これから、うっとおしい梅雨の時期に入ります。
くれぐれもおからだを大事になさってください。
どうぞお元気でいてください。ありがとうございました。

2012/06/06(水) |URL|☆バーソ☆ [edit]

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2012/06/11(月) || [edit]

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