「バーソは自由に」

考え方はいろいろあるから面白い。

 ルビは、ふりがなという名のパラレルワー(ル)ドである。 

山手線四ツ谷駅横の「外濠そとぼり公園」は、江戸城外堀の姿を残す国指定の史跡である。
堀には貸しボート場があり、春は土手に並ぶ240本の桜が楽しめる。

小学5年生の頃、ボート場のお兄さんと仲良くなり、しばしば遊びに行っては、
裏の物置で見つけた講談社の講談本全集を片っ端から読んだ。

オレンジ色の表紙に「荒木又右衛門」とか「怪傑児雷也」と書いてある古びた本で、
難しい漢字が多かったが、ふりがなが振ってあったので子供でも難なく読めた。

当時の本とは違いますが、最新の電子書籍Kindle版『講談名作文庫』。
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漢字の横に付ける「ふりがな」は、昔の人が親切心で考案したに違いない。
※1、
「ふりがな」の活版印刷用語は「ルビ」※2。この賛否両論がなかなか面白い。



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昭和13年、山本有三は、ルビは「黒い虫の行列」だと言った。
(山本有三は『路傍の石』『真実一路』の小説や、「振り仮名廃止論」で知られる小説家)

●『戦争と二人の婦人』のあとがき 岩波書店刊 ※3
いつたい、立派な文明国でありながら、その国の文字を使つて書いた文章が、
そのまゝではその国民の大多数のものには読むことが出来ないで、
いつたん書いた文章の横に、も一つ別の文字を列べて書かなければならない
といふことは、国語として名誉のことでせうか。

                   
山本は、漢字の横にさらに別の文字(ルビ)を書くなんてことは、
非文明的で、不名誉であると論じ、さらにこんなことも言った。
ルビを廃止すれば、(1)難しい漢字の使用を減らせ、平易な文章になる。※4
(2)印刷の能率が高まる。(3)小さなルビを読まずにすむので眼の健康にいい。

合理思考と欧米憧憬思想から発した理屈だが、当時は賛同者が多かった。
そして昭和21年、当用漢字が告示され、振り仮名は原則不使用と定められた。

英語の対応名をカタカナで振った最近例。「ソサエティー(会)」が先頭に来ている。
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https://twitter.com/g_stand/status/417309387393204224/photo/1


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昭和21年、太宰治は「ルビ」を振る文化を肯定的に論じた。

●『太宰治書簡』河盛好蔵宛(昭和21年4月30日)
 文化と書いて、それに、文化(ハニカミ)といふルビを振る事、大賛成。
 私は優といふ字を考へます。これは優(すぐ)れるといふ字で、優良可なんて
いふし、優勝なんていふけど、でも、もう一つ読み方があるでせう? 
 優(やさ)しいとも読みます。
 さうして、この字をよく見ると、人偏に、憂ふると書いてゐます。
 人を憂へる、ひとの淋しさ侘しさ、つらさに敏感なこと、これが優しさであり、
また人間として一番優れてゐる事ぢやないかしら、
 さうして、そんな、やさしい人の表情は、いつでも含羞(はにかみ)であります。
 私は含羞で、われとわが身を食つてゐます。酒でも飲まなけや、ものも言へま
せん。そんなところに「文化」の本質があると私は思ひます。              
  
太宰は、「文化」に “ハニカミ”とカタカナでルビを振り、
「含羞(がんしゅう)」には “はにかみ”と平仮名でルビを振り、
日本の「文化」には、“はにかみ” つまり“恥じらう”ことが含まれると論じている。

ここではルビは効用として、読み以外の別の意味を表現できると言っている。

「文化」のほうは、カタカナでルビを振っているのが面白い。
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平成7年、養老孟司は、マンガの吹き出しはルビだと言った。

●『「国語と脳』「出版ダイジェスト』第1710号
漫画の流行は、音訓読みという日本語の特性と切り離すことはできない。
この場合、漫画はアイコンであり、アイコンは古い形式の漢字と同じものである。

●『涼しい脳味噌』文春文庫
吹き出しの中がルビであり、マンガそのものは、漢字に相当する。
これはマンガを馬鹿にして読まない人には、わかりにくい理屈であろう。


要は、手塚治虫が考え出した無音を表す擬音語「シ~ン」は漢字のルビに相当し、
吹き出し(ルビ)があるゆえに絵(漢字)の状況がよりよく分かる、という趣旨だ。


講談社『進撃の巨人』。野球の話なら「きょじん」と読むが、このセリフは関西弁である。
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平成29年、バーソは、ルビとはパラレルワー(ル)ドだと言った。
(というほどのことではないのですが、話の流れで行き掛かり上こういう言い方になりました)

「生」は、読み約150種、意味13種。「生生生生生」は「あいうえお」※5と読める。
こういう読みや意味の違いを表したい場合に、ルビは有効なツールになる。
すなわちルビは、言葉の“平行多重世界”を表現できる超便利ワードなのだ。

●ネットや本から探した面白いルビ ※6
ギミック(仕掛け)、蒲魚(かまとと)、撹乱膜(チャフ)、呂(キス←泉鏡花使用)、
処女翫浮名横櫛(むすめごのみ うきなの よこぐし)、怪遊星人(ミステリアン)、
惡心(むかつき)、胃痙(しゃく)、家康(たぬき)、本気(マジ)、小忠実(こまめ)、
昨夜(きぞ←万葉集、よんべ←土佐日記)、幕府(トクガワケ)、威露破(いろは)、
私語(ささやく)、密会(みそかごと)、玻璃(ガラス)、あるがままに(let it be)、
成長(おいたち)、通夜(ヨモスカラ)、衛府私論(エプシロン←ギリシア語の ε)、
披露宴・二次会(かねあつめ・かこあばき)、賞(ほうび)、トランプ(どうかつ)、
越路吹雪(こすずふんぶき←吉里吉里語)、バーソ(きもちだけはわかきおのこ)、
三四郎はそれを機会(しお)に「あなたはどちらへ」と聞いた。←漱石『三四郎』


●次の字を読める人がいるかふぐ分かる問題 
(正解はカッコ内をドラッグ)
酢豚・養豚・海豚・河豚・磨琢 (すぶた・ようとん・いるか・ふぐ・またく)

カラス語でルビを振った例。「告」には「カーッ」と振ってある。滋賀県のコンビニにあったそうだ。
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http://pya.cc/pyaimg/pimg.php?imgid=33130

                

今まで、誰かに道を尋ねて、嫌な顔をされたことは一度もない。
特に地方に行くと、こちらが恐縮してしまうほど一生懸命教えてもらえる。
そういうとき、人の心の温かさを思い、胸がしばし熱くなる―――。

ルビは、そんな日本人の気遣いの心が生み出した宝石言葉ルビーワードではないか。
ちょっとした親切コメントがあれば、曇った精神バーソのこころでもたちまちに輝き出すのである。

ああー、冗談ほんとうですよ。もう読んでいただけるだけで感謝感激雨霰あしをむけてねられないです。(笑)




★前回の記事が面白くなかったので、今週も予定(ほんとは土曜日)より早く出します。


瑠美についての補足――――――――――――――――――――――――――――――――――
※1:720年成立の『日本書記』は中国語文で書かれており、中国語を理解しない人のために、
  返り点や送り仮名、振仮名なども含めた「訓点jが使われている。
※2:ルビの名の由来は、5号活字の振り仮名に用いた7号活字の大きさが、英国で「ruby」と
  呼ばれた5.5ポイントの欧文活字に相当したことから。「ruby」は宝石のルビー。
※3:この書には伝記『はにかみやのクララ』も含まれているが、これは最初『主婦の友』で
  総ルビで発表された。太宰治が文化論を論じる際「ハニカミ」の語を使ったのは興味深い。
※4:原文と当用漢字以外使わない文章との比較例。⇒夏目漱石『虞美人草』一部
 ●1907年初出の『虞美人草』原文(実際には漢字にルビが振られている)
  藤尾さん、僕は時計が欲しい為に、こんな酔狂な邪魔をしたんぢやない。
  小野さん、僕は人の思いをかけた女が欲しいから、こんな悪戯をしたんじゃない。

 ●1965年刊行の『漱石全集』筑摩書房・岩波書店
  藤尾さん、ぼくはとけいがほしいために、こんなすいきょうなじゃまをしたんじゃない。
  小野さん、ぼくは人の思いをかけた女がほしいから、こんないたずらをしたんじゃない。

※5:過去の拙記事→ 「生」は、活発で、深遠で、広大で、煩雑で、愉快なり。→ クリック
※6:参考にした書籍は、今野真二『振仮名の歴史』、柳瀬尚紀『日本語は天才である』など。
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 百年前の1917年は、戦争と災害と“今日もコロッケ”の年だった。 


2017-100=1917

今から100年前に生まれ、一世を風靡した舞台芸人がいた。

そろばんを楽器のようにかき鳴らし、ブロークン・イングリッシュを操り、
「レディース・アンド・ジェントルメン、おとっつあん・アンド・おっかさん」
と舞台で挨拶を始め、「ざんす」言葉で司会をしたトニー谷である。

そのトニー谷とそっくりなのが、いまPPAPの動画で世界に知られたピコ太郎だ。
面長の顔、コールマンひげ、音楽のリズム感のいいところが非常によく似ている。

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ピコ太郎の登場でトニー谷が生まれた1917年とつながった、否、つなげた。(笑)
当時はどんな時代だったのか。百年前を見るのも面白そうだ。

社会の出来事を見ながら、著名な画家の絵を観るブログ記事になります。

 バーソの2017年のごあいさつ 



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2017

本年もまたい変わらず
あかるく愉快で
んぜんな日々が
楽しめますようえ向きな話題を
心掛けますゆえんぼうしながら
お付き合いのほどをっとう徹尾お願いし
おめでとうございます
そして
Happy New Year
Bonne année
Felice Anno Nuovo
Ein frohes neues Jahr
Ευτυχισμένο το νέον έτοζ

とまあ
いつもより余計にあいさつをしております
でもギャラは無し
(笑)
というような冗談は酉あえず中断し
真摯に 真面目に 厳粛に
あなた様の
ますますのご安泰とご多幸を
心から祈念いたしまして
新年のお慶びを申し上げます

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Bartholomew



米国の思想家エマソンが『処世論』の中で、こう言っています。
We are born believing.
A man bears beliefs, as a tree bears apples.
われわれは、信じるように生まれついている。
一本の木にリンゴの実がなるように、 一人の人間には信の実がなる。

私は、性善説のほうが好きですね。
良いことを信じ、なるべく善い面を見ていきたいと思っています。
という気概のようなものがむろんあるわけではなく、
単にネガティブなものは楽しくないだけなんですが、
友あれ今年も明るく陽気にいきたいものですね。




※写真は最近、泊まった宿のご主人が撮ってくれたものです。
フォーカスを少しボカしましたが、実年齢より若く見えると思います。




 煩悩を取り除く良き方法を二つほど。 


わずらいなやむのが人間である。
わらいはずむのも人間である。
くれなずむのは師走の町のである。


この珍妙なる文字混合体を見よ。
耳鼻科や美容整形の看板にあらず。
頭に苦がある「煩悩」の造字なり。
ひと文字で表したる醜い自我の姿なり。


(108角の「煩悩」の字)
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出典:http://hikimoji.ciao.jp/sheajan/?p=656


人々の多憂多悩をなくすは除夜の鐘。
(つ)かれる回数は、
大晦日に百七回、元旦に一回。



ゴーン



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その鐘の音が百八つのワケはこれなり。


『煩悩』説
人を悩ますものは眼・耳・鼻・舌・身・意
これを好・悪・平(中間)の三感情で分派すれば、
三掛ける六は、十八。
さらに浄・染(汚い)の二状態で展開すれば、
十八掛ける二は、三十六。
さらに前世・今生・来世の時間軸も考えれば、
三十六掛ける三は、百八つ。


『四苦八苦』説
すなわち、四掛ける九(苦)は、三十六。
八掛ける九(苦)は、七十二。
併せて、苦が百八つ。


誤視護思ゴシゴシ』説
誤って視て己が思い込みを護ろうとする稚拙。
ゴシ(五十四)と、ゴシ(五十四)を足せば、百八つ。
心をゴシゴシ洗えば浄化できる。
これはバーソが切々と思う拙説である。


なお、
悩みは掛け算と足し算でやってくるのかよ
と思うならば、それは凡脳であろう。


ゴーン


さて、
煩悩のもう一つの消し方はこれである。



ひたすらーっとし
ああだこうだとかむむーとなやまず
きをしずめてんびりすれば
かならずにげみちかまいかんがえがでる
こまったらいたらいい
おちこんだならるしんだらいい
いきていけばかいはまわる


ゴーン


ゴーン


ゴーン


gone



gone


gone


gone

…・


今年も
ご訪問をありがとうございました。
コメントもありがとうございました。
うれしくて本当に感謝しています。
おかげさまで楽しく一年を過ごせました。
来年もどうぞよろしくお願いいたします。
バーソ


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