「バーソは自由に」

考え方はいろいろあるから面白い。

 八歳の童と孔子の問答。『宇治拾遺物語』より 

映画のワンシーンのように、金正男 キム・ジョンナム が国際空港で派手な女に毒殺された。
事件は北の工作説の他に、韓国の陰謀説、金正男の替え玉説(※1)もあるようだ。
真相はまだ分かってないが、防犯カメラの映像で犯行自体は秒単位で分かる。

どこもかしこも情報氾濫の現代。
多くの人は、自分の《目で見た情報》で物事を判断している。
だが《目で見た情報》は、大抵はマスコミやネットで知り得たものに過ぎない。

そうした情報は偏った視点で見ていたり、不確かであったり、虚偽であったり、
「群盲象を評す」の寓話のように、一面のみが真実という場合もある。

aelef.jpgフリー画像(pixabay)

どうすれば適切な判断ができるだろうか。
中世日本の『宇治拾遺物語』に、孔子が子供の目の賢さを褒めた話がある。


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八歳の童 孔子と問答の事―――『宇治拾遺物語』(巻第十二)

孔子が子供から「太陽の入る所と洛陽の都と、どちらが遠いか」と質問された。
孔子は当然「太陽の入る所、地平線の彼方」だと答えるが、子供の返答が面白い。

今は昔、唐(もろこし)に孔子、道を行き給ふに、八つばかりなる童(わらべ)逢ひぬ。
孔子に問ひ申すやう、「日の入る所と洛陽と、いづれか遠き」と。
孔子答(いら)へ給ふやう、「日の入る所は遠し。洛陽は近し」。

童の申すやう、「日の出で入る所は見ゆ。洛陽はまだ見ず。されば日の出づる所
は近し。洛陽は遠しと思ふ」と申しければ、孔子かしこき童なりと感じ給ひける。


子供の推論は、「太陽が西山に沈むのは目で見えるが、都の洛陽は目で見えない。
だから洛陽のほうが遠いはず」。孔子は、子供の考え方は賢いと感心した。(※2)

孔子は深く考えもせず、一般的な知識をそのまま答えとして出したが、
子供は自分の目で見たことを基に考えて、自分の答えを出したのだ。

orany.jpgフリー画像(pixabay)

人は何でも《自分の目》で見たことから正解を考え出していると思っているが、
じつは親や学校、友人、知識人の本などから得た知識をベースにした標準的な
思考回路が頭の中に出来ており、そこからほぼ自動再生的に答えを出している。


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人は外見を見るが、神は心を見る。―――旧約聖書

旧約聖書中にある逸話だが、神がイスラエルの新しい王を任命するため、預言者
サムエルをエッサイという人のところに遣わしたとき、サムエルは長男エリアブ
の堂々とした容姿に目を奪われた。そのときの主なる神の言葉が興味深い。

サムエルはエリアブを見て、「確かに、主の前で油をそそがれる者だ」と思った。
しかし主はサムエルに仰せられた。「彼の容貌や、背の高さを見てはならない。
わたしは彼を退けている。人が見るようには見ないからだ。人はうわべを見るが、
主は心を見る」
(サムエル第一16章6,7節)

油を注ぐとは、頭に油を注いで王に任命する儀式。預言者サムエルはエリアブの
容姿にカリスマ性を感じ、この人こそ次の王に任命されるべき人物だと思ったが、
神は、いや違う、人間は「うわべ」を見て判断するが、神は心を見ると言った。

そうしてエッサイの8番目の息子ダビデが、イスラエルの王に任命された。(※3)

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(1923年以前の聖書カード:出版者不明)

この「うわべ」とは容姿のことだが、現代ではマスコミやネットで知り得る程度
の情報も含められる。確かに人はよく調べもせずに、ああだこうだと言っている。


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人々の目が、世の中を暮らしやすくする。

金正恩は怖い目をしているが、異母兄の金正男はひとのよさそうな目に見える。
しかし内面のことまでは分からない。事件の裏にあるであろう真実も分からない。

金正恩はこの4年間で、朝鮮労働党の幹部だけでも100人以上殺しているそうだが、
父親の金正日の粛正は、殺害1万人、収容所送りが1万5千人とか。→深化組事件

そういうことを考えると、民主主義国家日本に生まれて、なんやかんやいっても
人民主権で大衆迎合主義でもあるポピュリズムが流行るような世の中は、まあ、
有難いことだと思うべきか。いや、すべての人が自由に判断できるリベラリズム
が望ましいと思うべきか。いや、やはり自国ファーストが賢いと思うだろうか。

ともあれ、民主国家での暮らしやすさは、国の指導者の政治姿勢に掛かっている。
2千年以上前に書かれた旧約聖書が述べている通りだ。

 「正しい者が権力を得れば、民は喜び、
    悪しき者が治めるとき、民はうめき苦しむ」
 (箴言29章2節)

つまりは良い指導者が出るかどうかは、国民ひとり一人の「目」に掛かっている。

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いずれにせよ強者やエリートや信念を持つ人は、独善的になったり、排他的にな
ったりせず、この社会で弱い立場にいる人をぜひ忘れないでいてほしいものです。



補足――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
※1:金正男は空港の椅子に腹を出して倒れていたが、本人なら腹に入れ墨があるはずだという話と
写真がネットに現れている。いや、息子が遺体を確認したという報道もあり、情報が錯綜している。
※2:孔子の逸話と似ているアンデルセンの童話『裸の王様』では、大人は世間の目を気にして本当
のことが言えなかったが、子供は自分の見たことを基に判断し、正直に自分の考えを言っている。
※3:敵のペリシテ軍の中に、身長2.9メートルのゴリアテという巨人の戦士が、一騎打ちで戦いの
勝負を決めようと挑戦してきて、兄エリアブをはじめ皆が怖気づいたとき、ダビデは甲冑をつけず、
石投げ器で放った石1発でゴリアテを倒した。少年ダビデはイスラエルの中で一番勇敢だったのだ。
(ちなみにギネスブックに記載されている史上最高の身長者は2.72メートルのロバート・ワドロー)
●話が政治に傾きましたが、政治には報道されていない裏の話があれこれあるようで怖くなります。
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NASA重大発表(2017/02/22)
●地球に似た惑星が7つも発見された。位置は太陽系からたった40光年の宇宙。
アメリカのNASA(航空宇宙局)は記者会見で「生命を育むことができる第2の地球が見つかるのは、もはや時間の問題だ」と述べ、今回の発見の意義を強調した。
とりわけ3つの惑星は、気温が適度で、水が液体で存在できるなどの条件が整っており、水が存在し、生命が存在する可能性もある。→ YouTube
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★宇宙には地球型の宇宙人が存在している確率が飛躍的に増大したことを示す。

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 日本人は、様々な「気」を気にしている国民だ。 


ある日本人が外国の会社で「いいお天気で…」「お元気ですか」「気を付けて」
と、よく声を掛けていたら、健康上の問題を抱えているのかと心配されたそうだ。

日本人はよく天分のことを話題にするが、それは遣いがあるからだろう。

の字は、意識や心の動き、気分、気体、雰囲気など、非常に多義に使われる。
の字の付く熟語や慣用句は、なんと360以上もある。
日本人はに関して特別繊細な感覚と気風があるのかもしれない。

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というわけでが多い詩と逸話です。気兼ねなく気休めにお読みください。
(笑)

 ユダのイエスを裏切る気持ち。太宰治の『駈込み訴え』。 


 Hey Jude, don't make it bad (ヘイ ジュード 悪く考えるなよ)
  Take a sad song and make it better (悲しい歌でも ましにしろよ)


これは『ヘイ・ジュード』(Hey Jude)の歌い出し。ビートルズの名曲の一つだ。

ポール・マッカートニーが、ジョン・レノンの長男5歳のために作詞・作曲。
(長男は愛称がジュールだが、普遍性を持たせるためにジュードとした)
ジュードは、あのイスカリオテの“ユダ”を思い出させる英語名でもある。

ジョン・レノンは、36年前の1980年、ファンだった男に射殺された。
(男の名はMark David Chapmanで、チャップマンとは古英語では商人の意)
イエスも、自分のファンであったはずの十二使徒の一人から裏切られ、殺された。

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ポール・ギュスターヴ・ドレ『ユダの接吻』。これが合図となり、イエスが捕まえられる。

ユダがなぜ裏切ったかにについては、昔からいろいろな解釈がされている。
(1)貪欲で、密告代が目当てだった。(2)大きな目で見れば神の目的の中にあった。
(3)サタンがユダの心に入った。(4)イエスを救い主だと信じる気持ちが弱かった。
(5)イエスがローマ政府に対して革命を起こさないので幻滅して見放した… 等々。

太宰治がユダの告白を兼ねた訴えというスタイルで、裏切りの動機を書いている。
妻の美知子が太宰の口述を筆記した短編小説『駈込み訴え』。
現場での生録音のようにして、ユダの心の動きと揺れを表そうとしているようだ。


 東大エリートが書いた、最後は「よって件のごとし」の遺書。 


 映画館や喫茶店にいたというのは、
  アリバイのない者が最も安易に使う常套句だった。
          ――――森村誠一『新幹線殺人事件』


世の中には、判で押したような定番の言い回しがある。

今、犯罪者が逮捕されて自白すると、ニュースで言われる常套句は、
「調べに対して『間違いありません』と供述しています」だ。

昔、証文や書状などの終わりに書かれていた定型句は、
「よって件(くだん)のごとし」であった。

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フリー画像サイト『pixabay』から借用

昭和23年、カリスマ東大生が詐欺事件を起こして書いた遺書の最後に、
この「件のごとし」が使われているが、この遺書が非常に類型を破っている。


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